そよ風の天使+9/桜田淳子

Viictor Entertainment VICL-62511
発売日/2007年8月22日
オリジナル盤発売日/1973年6月25日
(1)天使の初恋
(2)ちいさな花の恋
(3)乙女の祈り
(4)姉さんのお嫁入り
(5)よせがき
(6)虹のほほえみ
(7)天使も夢みる
(8)若草の夢
(9)天使の冒険
(10)わたしの千羽鶴
(11)涙はたいせつに
(12)足長おじさん
<ボーナストラック>
(13)16才の夏 ・・・「ベストコレクション75」(1974年12月5日発売 2枚組)収録曲
(14)悲しき雨音 ・・・同上
(15)恋のフィーリング ・・・同上
(16)青いカナリヤ ・・・同上
(17)シンデレラ ・・・同上
(18)北風の町 ・・・同上
(19)天使も夢みる(リミックス)・・・「わたしの青い鳥 桜田淳子 REMIX & BEST」(1992年12月16日発売)収録曲
(20)天使も夢みる(カラオケ)
(21)天使の初恋(カラオケ)
---
(1)~(13)、(20)、(21)・・・作詞:阿久悠、作曲:中村泰士、編曲:高田弘
(14)・・・作詞、作曲:John Gummoe 、訳詩:岩谷時子、編曲:あかのたちお
(15)・・・作詞:阿久悠、作曲:中村泰士、編曲:馬飼野康二
(16)・・・作詞、作曲:V.C.Fiorino、訳詩:井田誠一、編曲:高田弘
(17)・・・作詞:みなみかずみ、作曲:Paul Anka、編曲:高田弘
(18)・・・作詞:さいとう大三、作曲、編曲:高田弘
(19)・・・作詞:阿久悠、作曲:中村泰士、編曲:米光亮

1973年2月25日に「天使も夢みる」で鮮烈デビューを果した、桜田淳子のファーストアルバム。
全曲を阿久悠・中村泰士・高田弘が手がけた豪華な作品集で、当時15才になったばかりの彼女の持つイメージ(天使"="幼さの残る清純さ")に合わせた、優しげで可愛らしい印象のアルバムである。
サウンド自体は非常にシンプルで、ドラムやコーラスの音を極力抑え、ベースと桜田淳子のボーカルを強く押し出した音作りが特徴的だ。1973年という時代を考慮しても少し古臭いアレンジが多く、全盛期(75年~76年)の彼女を好むファンには物足りない内容かも知れない。
しかしサウンドがシンプルな分、桜田淳子の清涼感のある歌声が生々しく響き、まるで耳元で囁かれている様に聴こえてくる訳で...もう堪らないほど魅力的だ。
メルヘンチックさと純朴さが交錯する歌詞や、流麗なストリングスも心地良く、ヒーリング効果バツグンな(初期)桜田淳子ワールド全開の作品集である。
また、彼女の楽曲を歴史的な切り口で楽しみたいファンにとっても、マストアイテムであることは言うまでもない。

<オリジナル盤収録曲>
本アルバムの1ヶ月前に発売された2ndシングル(1)がトップを飾る。
情緒的なメロディーに乗せた、アンデルセン童話の様な歌詞が可愛らしい(2)。
好きな男子の家の周りをソウソワしながら彷徨くという歌詞の(3)は、水辺に咲いた花を自分自身に例えた(2)と合わせると、後の「花物語」と同じ世界が完成する。
但し「花物語」に見られた悲壮感はかけらも無い、とても明るい曲だ。
(5)は中学のクラスメートから貰った"よせがき"をテーマにした朗読。阿久悠氏にしては稚拙な表現が少し気になるが、ファンにはお馴染みの親友の名前が登場する等、中々微笑ましい。
ファンの間でも人気が高い2ndシングルのB面(6)と1stシングルの(7)は、迫力のあるベース音に相反した"ふんわりとした歌声"が疲れを癒してくれる、文句なしの名曲。
(8)は一時代前の歌謡曲といった風情だが、ラストに突然鳴り響くリバーブの効いたギター音が印象的だ。
転調するリズムが格好良いポップチューンの(9)は、元気一杯の歌詞が彼女のイメージにピッタリな傑作。演奏時間が短いせいか、繰り返し聴きたくなる余韻感も良い。曲の魅力に加え、タイトルに"天使"の冠が付いていることから、(1)と共にシングル候補だった可能性もありそう。
(11)は、初期ライブでラストソングとして定番だった名曲。ライブではスローバラード風な演奏と涙の歌唱が感動的なシーンを演出するが、本アルバムではテンポ良くさわやかに歌っており、曲の良さを再認識する事ができた。
(9)と(11)は本作のハイライトであり、この2曲だけでも十分に聴く価値があるのではなかろうか。
最後を飾る(12)はデビュー曲(7)のB面。パーカッション・フルート・ハーモニカ等の楽器がふんだんに使われた厚みのあるサウンドが魅力的で、14才の少女じゃなきゃ歌えないファーザー・コンプレックス風な詞も、既に中年期を迎えた短足おじさんの自分でもドキドキさせられる(笑)。
<ボーナストラック>
(13)~(18)は、注目すべきベスト盤「ベストコレクション75」の3面からの転録。ベストコレクションシリーズは、ベスト盤でありながら、2枚目(3面・4面)はすべて新録という贅沢な仕様。
1枚目の既発表曲が他のアルバム収録曲と重複するため、単独リイシューしなかったと思われるが、オマケで語るのは勿体無さ過ぎる程に良曲揃いの傑作アルバムなので、本ブログではオリジナル盤として別途紹介したいと思う。(VIVID社のクローンユアメモリーズシリーズでCD化済み)

歌唱力も表現力も未熟とか、そんな事はどうでも良いと思えるくらい、初々しい桜田淳子が織り成す世界に思わず心を奪われてしまう本アルバム。
ライブ盤も合わせて20枚以上リリースされた彼女のアルバム群の中で、私が疲れている時に耳を傾けるのは、この作品である場合が多い。
大変に好みではあるが、何度か登場する童謡調の曲がやや蛇足的に感じたので、星7つとした。
Preference Ranking ★★★★★★★☆☆☆
※上記ランクはアルバム完成度の"評価"では無く、私がどれだけ気に入っているかを示しています。
又、オリジナル盤に収録された曲のみを対象としており、ボーナストラックの内容は考慮していません。